有馬記念のファン投票で1位選出されたエフフォーリア（牡3＝鹿戸）が皐月賞、天皇賞・秋に続くG1獲りに挑む。送り出す鹿戸雄一調教師（59）に競馬アイドルグループ「桜花のキセキ」で活躍中の長女・成瀬琴が直撃インタビュー。父の胸に秘められたグランプリの勝算を聞き出した。　

　鹿戸娘　競馬の開催日になると、うちの家族はグループLINEで鹿戸厩舎所属馬のレース結果についてメッセージを交わします。エフフォーリアが天皇賞・秋を優勝した日は、母が「おめでとう！」、私は「強すぎる！」、弟は「感動した！ベストターンドアウト賞も凄い」。お父さんは「昨夜は一睡もできなかった」。
　鹿戸父　厩舎に泊まったけど、全く眠れなかったね。天皇賞では特にプレッシャーもなかったのに…。

　娘　自信はあった？
　父　いや、相手は初対戦の古馬、それも強い馬ばかりだから、どこまでやれるか…が本音だった。

　娘　だからこそ、喜びは一層大きかった？
　父　ダービーの負けがあったから一層うれしかった。武史（横山武）も同じぐらい“やった！”という気持ちがあったと思う。春は相当悔しかっただろうしね。

　娘　3歳馬の天皇賞制覇はエフフォーリアの祖父、シンボリクリスエス（02年）以来。お父さんの尊敬する師匠、藤沢和雄先生の管理馬だった。
　父　藤沢先生もレース後に駆け寄って「良かったな」と、とても喜んでくれた。ありがたいね。昔、シンボリクリスエスの調教にちょっと乗せてもらったことがあったが、パワーとスピードを兼備した素晴らしい馬だった。エフフォーリアも体つきに似たところがあると思う。

　娘　どこが似てる？
　父　背中が長くて、前躯（ぜんく）が発達しているところ。そのわりに3歳春まで腰の筋肉の盛り上がりがもうひとつだった点も似ている。でも、夏を過ぎて腰に筋肉がついてきたし、よりメリハリのある体つきになった。そういう成長ぶりもシンボリクリスエスと一緒。毛色は違うけど、雰囲気は凄く似ている。

　娘　父親には似てないの？
　父　エピファネイアは間近で見たことがないけど、レースを見た限りでは凄く前向きで根性がある。そういう気性は似ているかな。

　娘　シンボリクリスエスは3歳で天皇賞・秋を勝った後、JC（3着）、有馬記念（優勝）と進んだけど、エフフォーリアはJCをパスして有馬記念に直行。その理由は？
　父　成長途上だし、一戦一戦、一生懸命走る馬だからね。現時点では続けて使うことに不安があった。オーナーやノーザンファーム天栄の場長とも話し合ってローテーションを決めた。

　娘　天皇賞の疲れもあった？
　父　多少はあったけど、カイバはちゃんと食べていたし、想像していたよりも疲労は少なかったと思う。

　娘　3歳馬が有馬記念のファン投票で1位になったのは07年ウオッカ以来。凄いよね。
　父　たくさんのファンが応援してくれていると改めて感じる。ありがたいよ。

　娘　プレッシャーもあるんじゃない？
　父　ダービーのプレッシャーに比べたら…。あの時は大変だったからね。

　娘　今回はクロノジェネシスに挑戦する立場？
　父　そう、挑戦する側なんで気持ち的に楽。ジョッキーもスタッフも僕もダービーほどプレッシャーがかからない。いいほうに向くと思う。

　娘　クロノジェネシスは強い？
　父　強いね。グランプリ3連覇なんてできるものじゃない。海外挑戦もしたタフな馬。

　娘　最近、お父さんは1人で厩舎に寝泊まりして、夜には馬房の見回りもしているそうね。馬房で向かい合った時のエフフォーリアってどんな感じ？
　父　迷惑そうだよ（笑い）。“寝てるのに…”とか“まだご飯食べてるのに…”って顔される。でも心配だからちょこちょこ見回りしている。

　娘　ズバリ聞きますが、有馬記念を勝つ自信は？
　父　勝てるとは言えないけど、いい競馬は間違いなくできると思う。これからの調教の感じもあるけど、このままいい状態で進められれば勝負になる。

　娘　2500メートルも心配ない？
　父　中山の2500メートルは東京の2500メートルと違って、距離がぎりぎりの馬でも意外とこなせる。ダービーでは東京の2400メートルもこなしているし、そんなに不安はない。

　娘　中山は得意？
　父　皐月賞で結果を出しているし、器用な面もあるから。コーナーを6つ回る有馬の舞台にも不安はない。

　娘　完成度は何％？
　父　もう90％ぐらいまでは来ている。

　娘　ダービーの時も90％って言ってた。
　父　そうだっけ？負けたから85％ぐらいだったのかもね（笑い）。天皇賞・秋を90としたら、95％ぐらいまで上げられるようにやっていきたい。100までもうちょっとだね。

　娘　足りないのは？
　父　体つきに足りないところがある。背中から腰、尻にかけて。完璧になるまでもう少し。

　娘　古馬になってからのお楽しみね。その前に3歳で挑む有馬記念。勝てたら、家族みんなでお祝いの食事会…期待してます。ファンの方には当たり馬券のプレゼントができますように…。

　◇鹿戸　雄一（しかと・ゆういち）1962年（昭37）5月23日生まれ、北海道出身の59歳。84年3月、騎手デビュー。02年から5年間、藤沢和厩舎の調教に加わり、JRA通算346勝（重賞4勝）で07年引退。調教師に転身して08年3月開業。JRA通算361勝。同重賞10勝（うちG1・3勝）。夫人と1男1女。血液型A。

　◇成瀬　琴（なるせ・こと）4月4日生まれ、茨城県出身。JRA鹿戸雄一調教師の長女。乗馬技能認定3級。昨年6月、「馬事文化応援アイドル・桜花のキセキ」に加入。競馬予想番組出演など活動を続けている。血液型A。