【菊花賞】池江泰郎氏 アーバンシックとダノンデサイル 明暗を分けた勝負どころの位置取りの差

2024年10月21日 05:22

<菊花賞>直線で鮮やかに抜け出すアーバンシック(左)(撮影・奥 調)

 【池江泰郎 匠の解説】これほど激しいポジション争いとなった菊花賞も珍しい。前に行きたい馬は次から次に先頭をうかがって、逆に我慢する馬は後方でじっと待機の流れ。最終3~4角は馬群がひとかたまりとなり、好位外めを手応え良く押し上げた3頭が1~3着を占める結果。

 勝ったアーバンシックは道中が中団よりやや後ろだったが、気がつけば向正面からスパートしたアドマイヤテラの直後にサッとスイッチしている。最終4コーナーは絶好位だから、いやはやルメールが見事に操ってみせた、という印象が濃く映る。機に乗じた位置取りについてはジョッキーの手柄だが、馬も対応力と決め手は一級品。私はこれまでの戦いからササッと動けるタイプではないのかな、と思っていたが、なんの長丁場なら鞍上の意のままに運べるではないか。完璧なG1獲りといえよう。

 さて、皐月賞馬はいないので、ダービー馬と菊花賞馬になった2頭の明暗を分けた象徴的なシーンを挙げたい。やはり勝負どころの位置取りで、アーバンシックは馬群の外めをいつでも動ける手応えだったのに対し、好枠のダノンデサイルは内ラチ沿いが勝利のキーワードになるはずだったが、逆にあだになった。冒頭に記したように先行勢が出入りを繰り返す展開で、内ラチ沿いは踏んでいこうにも前が渋滞で万事休す…。展開でガラッと変わるのが競馬の怖さであり、逆に魅力でもある。

 アドマイヤテラは人気(7番人気)を考えれば大奮闘の3着。いや、直線は先頭だから大金星を逃した悔しさがあろう。武豊はテン乗りだったのに、スタミナがあることを把握していたようで1周目は後方で運び、2周目の向正面からスパートする大胆な策。菊花賞を面白くさせた一人だ。(スポニチ本紙評論家)

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