【仙波】藤沢和厩舎ハード調教 普通に乗ってても時計に

2021年11月25日 10:00

 木曜日のテーマは競馬。前週に高配当をヒットした記者が「この馬券こう当てた」で的中レースを検証する。先週のマイルCSは単勝1・7倍の圧倒的1番人気グランアレグリアが快勝。現役最多のG16勝目で有終の美を飾った。仙波広雄記者はラストランの今回、グランアレグリアには、引退戦の03年有馬記念で9馬身差の圧勝を決めたシンボリクリスエスのような仕上げが施されたと見抜き、真っ向から◎を打って仕留めた。

東京本社・浜田、仙波、万里絵マイルCS3連単5460円 諸星日曜福島8R3連単31万4080円 万里絵土曜福島12R3連単13万5370円 仙波日曜東京12R3連単12万7290円 諸星日曜東京11R3連単12万1340円 梅崎土曜福島8R3連単10万9300円 岡本土曜阪神12R3連複9万7970円
 「格好よく終われるよう本人に言っておきます」
 18年前の暮れ、藤沢和師から聞いたセリフ。シンボリクリスエスが03年有馬記念でラストラン。その当日に引退式をすることに関して取材していた時だ。
 それ以前に藤沢和師が手掛けた名馬タイキシャトルも、ラストランの98年スプリンターズS当日に引退式をした。ただ、単勝1・1倍の確勝ムードの中、3着に敗れた。シャトルの偉大さに陰りはなくとも少し残念だったことも確か。
 「そう。シャトルみたいなこともあるとオーナーに言ったけど、それでもやると言う。馬に負担が掛からない方がいいからね」
 「馬優先」はトレーナーだけでなく、陣営全体に貫かれている。それは当時も今も一緒。ただ、藤沢和師の代名詞である「馬優先」や「馬なり調教」は、その“聞こえ”からいささか勘違いされやすい。馬優先も馬なりも事実だがソフトとは違う。藤沢和厩舎の調教は相当ハードだ。例えば、追い切りと言われる速い時計“ではない”通常の調教が、一般的なそれより速めだったりする。ラストラン前のシンボリクリスエスも追い切りは馬なり。通常の調教も馬なりだがピッチがかなり速い。負荷をしっかりかけて、馬体が黒光りして凄い仕上がりになっていた。「馬優先」は、その場だけのことではない。将来や繁殖の価値も考える。藤沢和師の座右の銘は「一勝より一生」。だからこそ「一生分の一勝」があるなら必勝の態勢を敷く――。
 マイルCSは、当日の引退式はないが、グランアレグリアのラストラン。来年2月の定年を控えた名伯楽が、トレーナー生活のゴール前で手掛けた最高傑作。その馬の競走キャリアをどう終わらせるか。美浦トレセンの高木記者から「グランは凄いですね。普通に乗ってても時計(追い切りのような速さ)になる感じですよ」という報告を聞いて確信した。グランアレグリアの仕上げはシンボリクリスエス仕様だ。
 レースでグランアレグリアは、同じ勝負服の3歳馬シュネルマイスターの挑戦を受け止め、はね返して優勝。マイル女王の貫禄。それはもう格好良かった。JRAマイルG1最多勝、獲得賞金10億円超え…といった記録に加え、この“一勝”でグランアレグリアを語り継ぐファン、「マイル最強はグラン」と一生、言い続けるようなファンが増えたはずだ。
 (仙波 広雄)

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