鹿戸師 馬への愛も“藤沢流”引き継ぐ 次々湧き出る斬新なアイデアに脱帽
2022年2月24日 05:30 理想であり、憧れであり、目標でもあるトレーナー。でも、その大きな背中は10年以上追いかけ続けても近づいてこない。私にとっての藤沢和雄先生です。いや、多くのホースマンにとってそういう存在だと思います。
騎手時代後半を含めて5年間、藤沢厩舎の調教に加えていただきましたが、泉のように湧いてくるアイデアには驚かされるばかりです。固定観念にとらわれず、馬の体調、気分、馬場の状態にも合わせて最良の方法を考えていた。私も調教で騎乗させてもらったゼンノロブロイには縦列のままゴールまで等間隔で芝コース2周…。気分良く走らせながら折り合いを覚えさせていたのです。時計を出すことではなく、走りたい気持ちにさせるのが稽古だと教わりました。
馬なり調教や集団調教ばかりか、馬場入り前の輪乗りも先生のアイデア。スタッフが馬上からすぐ前の馬の蹄をチェックすることで落鉄を発見できる。それまではバラバラに馬場入りして目いっぱいの追い切り。調教風景が変わりました。
運動、調教からカイバの調合まで、まね事かもしれませんが、藤沢流でやってきたつもりです。来月からは先生の厩舎棟を引き継ぎます。馬への愛情も受け継がなければ怒られちゃう。毎日、厩舎の全ての馬に寄り添い声を掛けてあげるのが先生のやり方。その遠い背中に近づくには日々の積み重ねしかないぞ…と、大きな背中が語ってくれるのです。 (JRA調教師)
《藤沢和師、名勝負数え歌 03年有馬記念=シンボリクリスエス》連覇が懸かるシンボリクリスエスはこれがラストラン。中団から4角で2番手まで押し上げると直線は独壇場だった。独走。2着リンカーンとの着差はレース史上最大着差となる9馬身。藤沢和師は「ファン投票1位だし、ホッとしたのが正直な思い」と胸をなで下ろした。ぶっち切りの勝利で花道を飾ったクリスエスはレース後に引退式を行い、ファンに別れを告げた。