【宝塚記念】エフフォーリア 絶対王者復活見えた!効いたブリンカーの魔法、軽快3頭併走

2022年6月23日 05:30

ウッドチップコースで追い切るエフフォーリア(手前)(撮影・郡司修)

 “魔法の馬具”で反転攻勢だ。中央競馬の上半期を締めくくるグランプリ「第63回宝塚記念」(26日、阪神)の追い切りが22日、美浦、栗東トレセンで行われ、昨年の年度代表馬エフフォーリアが闘志あふれる走りを披露した。その両目の外側には初着用のブリンカー(視界を一部さえぎる馬具)。大阪杯ではまさかの9着大敗を喫したが、効果抜群の矯正用馬具で雪辱を果たす構えだ。同レースは23日に出走馬と枠順が決まる。 

 まるで魔法をかけられたような前進気勢。青地に黄文字で「エフフォーリア」と刻まれたG1ゼッケンが揺れる。「ハミが掛かったな。やる気になってるぞ」。馬場の外ラチ沿いから追い切りの動きを見守る鹿戸師の表情がみるみるうちに緩んでいく。その視線の先には初めてブリンカーを着けて4角を回るチャンピオンホース。3頭併せの真ん中でうなりを上げた。祖父シンボリクリスエス譲りの長い背中を激しく収縮させる。左右から追いすがるパートナーを一瞬にして突き放した。

 「やっとエフフォーリアらしさが見えました。物足りなかった1週前とは明らかに違います。馬のうなり方が一変して、久々に4角でしっかり(手綱を)抱えて回って来られました」。主戦・横山武も納得顔で引き揚げてくる。手綱を押しても反応が鈍く、首をひねった1週前追い切りとは別馬のような走り。左右の視界をさえぎり前方に馬の気持ちを集中させるブリンカーが魔法の馬具のような効果をもたらした。

 「3歳のうちは一生懸命走る馬でもいずれ気持ちが入らなくなる。その時にどう対処するか…。引退前に親分(藤沢和雄元調教師)からそんな話を聞かされた」と鹿戸師は明かす。英国流ブリンカー使用法でタイキブリザードなど管理馬の集中力を引き出したレジェンドの教え。矯正用馬具着用は大阪杯直後から鹿戸師の胸の内にあった。

 1度の敗戦には10の敗因があるという。これも親分の教え。大阪杯9着の敗因について鹿戸師は「初の関西遠征、初めてのハイペース、馬体にも少し余裕があった」と語るが、ゲート内でのトラブルも大きな敗因だ。左右の枠にはアカイイトとウインマリリン。デビュー以来初めて牝馬に挟まれて興奮した4歳牡馬は鳴きながらゲートの前扉に突進して頭をぶつけた。額に傷腫れができたほどのアクシデント。軽い脳振とうを起こしたか、異性に気を取られたか。ともあれ、行きっぷりの悪さは集中力を欠いたせいだった。

 チャンピオンホースの失われた集中力を呼び戻したブリンカー。「一番強い馬だと信じている。結果にこだわりたい」。鹿戸師は魔法をかけられたような前進気勢に王者復活を確信した。

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