【有馬記念】マーカンドの流儀!ポジション・コントロールでジャスティンパレスV導く

2022年12月21日 05:30

トム・マーカンド

 英国のイケメンがにやりと笑った。「第67回有馬記念」を前にジャスティンパレス(牡3=杉山晴)騎乗のトム・マーカンド(24=英国)が猛アピール。“追える”との評価をすでに確立しているが「大事なのは位置取り。グランプリは難しいコースでチャンスはある」と自信を見せた。同期間に同じく初の短期免許を得た妻ホリー・ドイル(26)の応援も背にビッグタイトルを釣り上げる。

 今年の3月21日。トムとホリーが結婚する時、世間からはこう呼ばれた。

 「レーシング・パワー・カップル」

 21年、マーカンドは英国リーディング2位、ドイルは3位。22年、結婚した2人は共に91勝を挙げて勝ち星2位タイで仲良くフィニッシュ(1位はビュイック)。パワーは健在だ。

 日本での知名度は英国最高の女性騎手であるドイルが先行していたが、21年に夫妻ともJRA短期免許取得の基準(英国の場合、賞金リーディング5位以内か指定G1・2勝以上)に達した。マーカンドは「ホリーと一緒に日本に行きたいね、って話していたんだ」。ハネムーンの話ではなく、さらなる騎乗技術の向上を目指す旅。「日本の競馬はエキサイティング。トップの馬にトップの騎手。ぜひ乗ってみたいと思っていた。基準をクリアできたから申し込んだんだ」と目を輝かせた。

 マーカンドは24歳の伸び盛り。意欲も旺盛だ。10月29日の初騎乗から最初の2週間は1番人気の馬はいなかったが3勝、2着3回。日本競馬に瞬く間に適応した。

 「自分のスタイルを貫いているつもり」と語る。遠目にも分かる追いっぷりの力強さ。ズブい馬をバテさせない技術から早々と「追える」との評判を得た。

 「日本のファンに好印象を持ってもらえるのはうれしいよ」と相好を崩したマーカンド。はにかんで(シャイなのだ)こう主張する。「追える、つまりハードワークはもちろん大事なことだけど、自分が重視しているのは位置取り。ハードワークでいくら伸びても、届かない位置にいてはね。ペースに合わせた位置取りができるのが、自分の強みだと思っている」。

 どうしてもアクションの激しさが目立つが、本人が自信をにじませるのは序盤のポジションコントロール。促してハミをかませて行く気にさせ、そこから折り合わせる技術には思わずうなる。間違いなく欧州競馬の次代を担う一流だが、それでも有馬記念の騎乗は特別だと声を弾ませた。

 「ジャパンCと有馬記念は世界的にも有名なレース。日本に行くことを意識し始めてから見ているが素晴らしいレースだと思う。まずは乗れることに感謝したい。とても楽しみにしている」
 有馬でのパートナーとなるジャスティンパレスは菊花賞3着馬。栗東トレセンに赴いて1週前追いに騎乗した。「じっくり構えて、申し分のない手応えで回ってきて、直線追ってからもしっかり。動きに満足している」と手応えを得た。実績では上位馬に見劣るのは承知の上で「メンバーが強いのは分かっているが中山はタイトで独特の難しさがある。強い馬が必ず勝つコースではない」と野心を隠さない。

 ここまで好成績を残し、日本ライフもエンジョイ中だ。ホリーと箱根を訪れた写真をインスタグラムに上げたこともある。「和牛は素晴らしいよ。特に神戸ビーフはワンダフル。ジャスティンパレスは“神戸”新聞杯を勝っているんだろう?」

 生真面目でシャイだが朗らかで社交的で愛妻家。そんなトム・マーカンドの騎乗に注目してほしい。

 《4角3番手以内理想》有馬記念は位置取りが肝心。過去10年、4角6番手以下から差し切った馬は12年ゴールドシップ、19年リスグラシューの2頭しかいない。6頭と過半数が4角3番手以内からVをつかんでいる。マーカンドが自信を持つ、ポジションキープ力がVを呼ぶか。

 ◇トム・マーカンド 1998年3月30日生まれ、英国チェルトナム出身の24歳。チェルトナムフェスティバル(英国の有名な障害競走)が行われる地で育ち、ポニー競馬などで自然と馬に親しむ。12歳の時のポニー競馬でホリーと出会う。14年英見習騎手免許取得。16年騎手免許取得。20年アデイブとのコンビで英チャンピオンSを勝つなどブレーク。今年は632戦91勝で妻のホリーとともに英国リーディング2位タイ。今回が初のJRA短期免許。10月29日の東京8Rカトゥルスフェリスで初勝利。JRA通算123戦15勝(20日現在)。1メートル66、54キロ。

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