福永&樫原助手の地道な育成 一気に開花したヴェラアズール
2022年12月21日 11:00▼日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の小林篤尚(45)が担当する。今週は当コーナーも有馬記念にかぶりつき。ヴェラアズールを担当する樫原仁久助手(44)にスポットを当てた。
“ユーイチの教え”がここにもあった。ヴェラアズールは福永と過去7度のコンビ。1勝クラスを勝ち上がるまでの8走のうち6走で手綱を取った。担当の樫原助手は「新馬の頃に福永祐一さんから“もっと良くなるから、首を下げさせるより前の位置でハミをとれるようにしてあげれば脚も前に出てくる。そういう乗り方をした方がいいよ”と言われました」とアドバイスを授かった。
少し頭の高い走りはこの馬の個性。名手の言葉を胸に刻み、仕事に取り組んだ。「そうやってできているか分からないけど、自分で乗る時は意識して引っ張り殺さないようにしています」と教えを守った。脚元への負担を考慮して、ダートでキャリアを積んできた。今年3月に芝へ転向して即2勝クラスを勝ち上がり。そこからわずか7カ月で京都大賞典を制し、一気にスターダムへのし上がった。
「どこかで芝を使ってくれればという思いはありました。乗った感じが軽いですし、乗った人はみんなそう言っていましたね。馬も芝の使い始めと比べると、ジャパンCを使う頃の方が良くなっています」
自身にとっては京都大賞典が担当馬としての重賞初勝利だった。過去には17年にメイソンジュニアでニュージーランドT2着、ファルコンS3着があった。「重賞を勝てたのが夢のようで、その気持ちが冷め切らないうちにジャパンCでした。仕上がりも良かったですね。今回はまたメンバーも強くなるので、どこまでやってくれるか」と期待を膨らませた。有馬記念でG1連勝を狙う。
仕事をする上で大切にしているのは“どんな小さなことにでも気づいてあげられること”と言う。馬房でのツーショット写真をお願いすると「馬房の中ではオフですね。よく噛(か)んできます。甘噛みの範囲でたまにカプッってくるから、腹立つんですよ(笑い)。オンオフがはっきりしています」と笑顔を見せた。
ダートで16戦してから芝に転じて開花した異色のキャリア。しかも芝での6走は全て上がり3F最速だ。そんな“個性派”が有馬の主役になるか。「夢のようというか、信じられない」という思いは、暮れの中山でさらに増幅する。
◇樫原 仁久(かしはら・よしひさ)1978年(昭53)10月27日生まれ、神戸市出身の44歳。高校生の頃に競馬と出合い、ビクトリーホースランチでの牧場勤務を経て栗東トレセンへ。06年の牝馬2冠カワカミプリンセスを担当した深川助手(現四位厩舎)は高校の同級生。
◇小林 篤尚(こばやし・あつひさ)1977年(昭52)3月31日生まれ、大阪府枚方市出身の45歳。01年入社。04年からボートレース担当、16年に中央競馬へ。思い出の有馬記念は99年のグラスワンダー。わずか約4センチ差でスペシャルウィークを退けた激闘にシビれた。