カッチースマイルで別れ 最終騎乗日に連勝!「来年は52歳の新人調教師。オールドルーキーもよろしく」

2023年12月29日 05:20

仲間から胴上げされる田中勝(撮影・村上 大輔)

 カッチースマイルでフィナーレを飾った。今年いっぱいで騎手を引退、来年1月に調教師に転身する田中勝春騎手(52)が、28日のレース後に中山競馬場のパドックで引退式を行った。最終騎乗となった同日の中山1、2Rを連勝。34年間の騎手生活に別れを告げたカッチーは、心温まる手記を本紙に寄せた。

 顔で笑って心で泣いて…。2500人のファンが集まった中山競馬場のパドック。「こんなに寒い夕方にこんなに大勢の人が集まってくれて…」とあいさつする田中勝を騎手仲間が取り囲む。レースVTRをバックに惜別の胴上げ。笑顔で宙を舞いながら34年間の騎手人生が走馬灯のようにまぶたに浮かぶ。

 「長い間、関係者やファンの人たちに“ああだ、こうだ”と言われながら育ててもらいました(笑い)。立派にとは言いませんが、いい感じに育ててもらって幸せ者です」。秋の天皇賞(セキテイリュウオー)で鼻差2着に敗れた悔しさを笑顔でごまかしながら検量室裏で号泣したのは30年前。頭差2着に敗れた皐月賞(サクラプレジデント)のゴール後、優勝したM・デムーロ騎手に頭をはたかれ、悔し涙を笑顔で隠したのは20年前の中山だった。引退式の最後にはM・デムーロの頭を笑顔ではたく手厚い返礼。パドックが笑いに包まれた。

 ラストデーは1、2Rを連勝。「今日やめる騎手には見えない」。後輩の北村宏が驚きの声を上げるらつ腕ぶりを発揮した。「前夜はあまり眠れず、ボーッとしながら乗ったのに…。馬が偉いです。そんな馬を育てたい。来年は52歳の新人調教師。オールドルーキーもよろしく」とカッチースマイルで締めくくった。

 ▼武豊 思い出はたくさんあるけど、騎乗センスがずっとうらやましかったです。調教師になっても、たくさんカッチースマイルを見せてください。

 ◇田中 勝春(たなか・かつはる)1971年(昭46)2月25日生まれ、北海道三石町出身の52歳。89年3月4日に美浦・藤原敏文厩舎所属で騎手デビュー。バセドー病で半年の休養を経て、同年10月21日に東京6R(セキテイボーイ)でJRA初勝利。JRA通算2万657戦1812勝、うち重賞51勝、G12勝(92年安田記念ヤマニンゼファー、07年皐月賞ヴィクトリー)。1メートル55、51キロ。実家は三石の生産牧場。血液型AB。趣味はゴルフ。

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