【梅崎】10番人気大穴作戦顛末お届け!

2021年4月8日 10:00

 名は体を表すとの格言は競走馬の名前にもそのまま当てはまる。雨の予報とあって道悪馬場を想定した両国特別で本命に推したのはシャチ。水族館の客席に向けて豪快に水しぶきを浴びせるパフォーマンスで人気の海洋動物から命名された馬が水の浮くコースを嫌うはずがない。実際に道悪実績もある。後方一気に突き抜けてデビュー初勝利を挙げたのが重馬場。12番人気だった前走の2勝クラスでも重馬場でブービー14番手から3着まで追い込んでいる。

 所属は"穴馬の宝庫"と呼ばれる小桧山厩舎。12番人気で08年ダービー2着のスマイルジャックを送り出し、昨年のエプソムCでもどん尻18番人気のトーラスジェミニが3着に飛び込むなど穴厩舎は健在だ。調教ばかりかペンとカメラもプロ顔負けの小桧山師が手塩にかけて育てる若手の逸材、原優介が騎乗。その原も調教でシャチの充実ぶりを実感していた。となれば、本命にする価値はある。人気のアオイクレアトール、ドゥラモットにも印を付けてゲートインを待った。

 競馬の予想以前に天気予報が外れて当日の中山は曇、良馬場。本命に推したのを後悔しながらテレビ画面を見つめていると、10番人気のシャチは水を得なくてもスイスイと向正面を加速していく。3、4角で潮吹きならぬ息継ぎをして迎えた直線。外から豪快に半馬身突き抜けた。ドゥラモット、アオイクレアトールが2、3着に粘って3連単9万900円。

 またしても管理馬が大穴をあけた小桧山師は「体調がいいだけでは勝てない。原がうまく乗っていた」と愛弟子を称賛。馬名をつけた中村勝彦オーナーにとっては22年ぶりの特別勝ち。戦前戦後の中山競馬を支えた祖父・中村勝五郎オーナーの銅像がパドック脇から見守る中、シャチは高々と勝利の潮を吹き上げたのだった。(梅崎 晴光)

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