【梅崎】本命が出走を取消”不運”一転 幸運の馬単ゲットできたわけ

2024年2月22日 10:00

 木曜のテーマは競馬。前週に会心のヒットを放った記者が、的中のプロセスを振り返る。フェブラリーSの3連単153万円超は惜しいところまで迫った記者はいたものの届かず。同日の小倉大賞典において馬単4420円を◎▲で的中した梅崎晴光記者に登場を願った。元々◎予定の馬が取り消した後の顚末(てんまつ)を酒場で語った。

 人間万事塞翁(さいおう)が馬という。小倉大賞典の馬単を仕留め、カイロよりも温まる当たり馬券で凍えた懐を癒やした日曜夜。「不運が幸運に転じることもあるのね」。日曜夜、銀座路地裏の酒場「寓話」でささやかな祝杯を挙げていると、女将がホットウイスキーのお代わりを作りながら笑顔を向けてくる。

 小倉大賞典で本命に推したディープモンスターが出走取り消しになったのはレース前日。「ついてないって肩を落としながらエピファニーに本命をすげ替えて的中するとはな。俺もその幸運を美酒と一緒にあやかりてえぜ」。酒場の常連・金城は振る舞い酒と聞いて、山崎の12年(シングルモルトウイスキー)で喉を潤している。

 1番人気で負けた馬の次走は買いという。敗因がはっきりしている時はなおさら狙える。中山金杯を1番人気で11着に大敗したエピファニー。「スポウマWeb」の予想コラムでも記した通り、折り合いを欠いたのが敗因だった。鞍上のピーヒュレクが出遅れを取り戻そうと急がせたところ、引っ掛かってしまった。せいては事をし損じる…の見本のような騎乗ぶり。この数年で急激に腕を上げた杉原への乗り替わりはエピファニーにとって幸運だった。栗東トレセンに滞在する同馬とコンタクトを取るため最終追いから付きっきりで調教に騎乗。レース本番ではコントロールが難しい騎乗馬を完璧に折り合わせた。中山金杯とは別馬のような末脚を引き出したのは杉原のお手柄だろう。

 昔、中国の北辺で塞翁(老人)の飼っていた馬が逃げて行方不明になったが、数カ月後に駿馬を連れて帰ってきたという。塞翁の子供がその駿馬から落ちて骨折したが、そのため徴兵されず命拾いしたという。古代中国の思想書「淮南子(えなんじ)」に登場する「塞翁が馬」の由来である。

 禍福はあざなえる縄のように転々と変わる。中山金杯の大敗から小倉大賞典の優勝へ。エピファニーも「塞翁が馬」なら、本命馬をすげ替えて当たったのは「塞翁が馬予想」。つかの間の幸福と山崎12年のホットウイスキーに酔いしれるうち、路地裏の夜は更けていく。

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