兄弟で「皐月賞馬の父」の偉業

2025年4月23日 05:30

 超高速馬場で争われた第85回皐月賞。断然人気クロワデュノールが同じ父のピコチャンブラックを露払い役に抜け出すかに見えたのだが、その外を強襲したのは“マジックマン”に操られたミュージアムマイル。結果的に血統ではなく、勝負服と展開が「10年前の再現」という当欄としては何とも歯がゆい決着だった。
 1分57秒0の皐月賞レコードで突き抜けたミュージアムマイルはリオンディーズ産駒。極限のタイムトライアルで繰り出した末脚にもまた、10年前のドゥラメンテを想起させる凄みがあった。9年前に4位入線後5着降着となった父のリベンジに成功した形だ。

 ちなみにリオンディーズは、21年皐月賞馬エフフォーリアの父でもあるエピファネイアの半弟。グレード制導入の1984年以降、種牡馬としてクラシック勝ち馬を出した兄弟は、どちらも「菊花賞馬の父」であるブラックタイドとディープインパクトに次いで2組目となる。古くは同じく兄弟で菊花賞馬を出したセントライトとトサミドリ、兄弟で皐月賞&菊花賞サイヤーとなったモンタヴァルとムーティエの例があるが、いずれにしても日本の血統史に特筆すべき快挙といえる。

 父馬が異なるこの兄弟の種牡馬能力は、競走能力と繁殖能力を連動させた名牝である母シーザリオに負う部分も大きい。その父スペシャルウィークは、98年皐月賞で1番人気に反して3着に敗れた。当時の悔恨が子孫の皐月賞における決定力の原点なのかもしれない。(サラブレッド血統センター)

特集

この記者のコラム

他の記者のコラム