【梅崎】邪気払う”赤”パワーで3連単12万4940円的中!

2022年1月20日 10:00

 皐月賞は最も速い馬が勝ち、ダービーは最も運のいい馬が勝つという。ダービーが30頭近い多頭数で行われ、しばしば交通渋滞も起きた昭和の格言である。出走枠が18頭に制限された今日は運より実力。ダービーに代わって、ハンデ重賞は最も運のいい馬が勝つ…が令和の格言だ。
 「やっぱり赤は邪気を払って幸運を運んでくるんだな。おかげでひと息つけたぜ」。暦の上で小正月にあたる15日の晩方。銀座路地裏の酒場「寓話」でハンデ重賞・愛知杯的中の祝杯を挙げていると、こちらの予想に乗って久しぶりに懐を温めた常連の金城が手にしたビールと同じエビス顔を向けてきた。
 「昨日の夜に言った通りになったわね。小正月に赤い色の食べ物を口にすると、運気が上がるの。私が小豆がゆを食べさせたから的中できたのよ。鍋にまだ少し残ってるから温める?フフフ…」。万券を背負って飛んできたルビーカサブランカと同じ名の花束をご祝儀代わりに受け取った女将がカウンターの向こうから笑顔の花を咲かせる。
 カサブランカといえば白が基本色だが、深紅の花を咲かせるルビーカサブランカ。ハンデ重賞で最も運のいい競馬ができたのも不思議なレッドパワーだろう。「あまりスタートがいい馬ではないが、今日はたまたま出てくれた」と鞍上・武豊は振り返る。最内枠からのスタート。もし、出遅れていれば、外から馬群にかぶされて…。最内枠がアダ花になっていたところだが、幸運の女神の見えざる手に後ろから押されたようにタイミング良くスタートできた。直線入り口では幸運の女神に導かれたようにインの進路がぽっかりと空いた。「ラッキーカラーってやつだな。中山金杯もレッドガランが勝ったものな」と金城はゆで小豆のような赤ら顔で言う。
 幸運を生かせるだけの実力もあった。デビュー19戦して18戦が掲示板(5着以内)に載る堅実ぶり。前走(昨年12月のオリオンS)は直線入り口で他馬にぶつけられる不利を受けながら1馬身半突き抜けた。脱皮して赤い実をのぞかせる小豆のような一皮むけた勝ちっぷり。母ムードインディゴ、全兄ユーキャンスマイルは古馬になって初めて重賞タイトルを手にした。赤いカサブランカも4歳の暮れになって遅咲きの血統に開花の兆しを見せていたのだ。
 今の中京の馬場はインが断然有利。仮柵で保護されていた最内部分が正月開催から開放され、内ラチ沿いに傷みの少ないじゅうたんが出現した。最内枠から五分に発馬できれば、そのじゅうたんを通れる。本命に推せる材料がそろっていた。
 ハンデ重賞は最も運のいい馬が勝つ。令和の格言通りに決まって3連単12万馬券の小正月のお年玉。「今夜は存分に飲むぜ。あんたのおごりでな」。再びエビス顔を向ける金城と一緒にヱビスビールの空き瓶を並べるうちに祝宴の夜はふけていく。翌日、二日酔いよりもっと始末の悪いフケ(馬券の総外れ)が待っているとも知らずに…。 (梅崎 晴光)

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