【仙波】“サクラ”への情念が引き寄せた馬単3万円超

2024年2月8日 10:00

 木曜のテーマは競馬。前週に会心ヒットを放った記者に的中のプロセスを振り返ってもらうが、◎○の本線で東京新聞杯の馬単3万6140円を的中した仙波広雄記者は「あれは確か90年のアメリカジョッキークラブカップで…」と、いきなり34年前を振り返り出した。古い競馬ファンならではの執念の予想とは!?

 昭和から平成にかけての競馬を知る者は「桃地、白一本輪、桃袖」の勝負服にいろいろと思い出がある。冠名サクラの馬たちだ。記者が同時代で目にしたのはサクラホクトオー以降。バクシンオー、チトセオー、ローレル、キャンドル…。サクラの面々と時に喜びを分かち、時に立ちはだかられた。近年は規模が縮小となったが、「お、サクラが出てる」となる競馬ファンは自分だけではないだろう。

 小規模となっても間断なくオープン級を擁する冠名サクラ。現役エースのサクラトゥジュールは牝系が曽祖母サクラセダン(チヨノオー、ホクトオー兄弟の母)で、サクラの重要牝系スワンズウッドグローヴ系。「鮮やかに勝ち、華々しく負ける」サクラらしさを継承しているこの馬にずっと注目していた。とにかく乗り難しい。前に壁をつくれないと駄目、行きすぎて駄目、控えすぎて駄目。でも能力はある。まさにスワンズウッドグローヴ系。当時サクラの主戦だった小島太の苦労がしのばれる。

 23年東京新聞杯。その前のレースであるニューイヤーS2着の内容が良く、◎サクラトゥジュールで勝負した。しかし、7枠13番スタートで壁をつくれず、力んだまま走っての14着。失意に沈んだ。

 そして24年東京新聞杯。今年は壁をつくりやすい1枠1番。しかも、よどみないペースで引っ張るウインカーネリアンの逃げ濃厚。力みやすい馬には競馬しやすい。7歳になったサクラトゥジュールだが、長持ちの牝系だし「遅咲きのサクラ」は競馬ファンなじみのフレーズ。今年こそ。90年代競馬を引きずる者の情念が打たせた◎だ。

 インベタ待機から内のスペースをズバッと差す。理想的な最内枠からの運びでサクラトゥジュールが勝利した。冠名サクラとしては17年札幌記念サクラアンプルール以来だが、スワンズウッドグローヴ系としては05年アルゼンチン共和国杯サクラセンチュリー以来のJRA重賞勝ち。冬の府中でサクラの返り咲き。ちょっと泣きそうになった。あと3着が抜けて本当に泣いた。

特集

この記者のコラム

他の記者のコラム