数多くのドラマを生んだ亡きテトラドラクマ

2025年2月14日 05:05

クイーンCを制すテトラドラクマ

 【競馬人生劇場・平松さとし】
 「モグラみたい」

 極端に頭の低いフォームのため、田辺裕信騎手は笑いながらそう言った。

 「地に潜るのかと思うくらい、頭を下げて走っていましたから…」

 これがテトラドラクマに初めてまたがった時の印象だった。18年のG3クイーンCに出走した際の話だ。

 テトラドラクマがデビューしたのは17年7月。調教では良い動きを見せ、能力の高さも評価されていたため、初戦は1番人気に支持された。しかし、結果は9着。まだ緩さが残り、勝ち上がるまでに3戦を要した。

 その後、G3フェアリーSに挑んだが6着。平均体温が高く、まだ成長途上の段階だったという。

 そして迎えたクイーンC。田辺騎手との初タッグで1000メートル通過57秒台という超ハイペースで逃げた。さすがに最後は失速するかと思いきや、いったん突き放し、そのままセーフティーリードを保ってゴール。見事、重賞初制覇を果たした。

 そのラップタイムが示す通り、潜在能力の高さは確かだったが、さすがに反動が出てG1桜花賞は回避。復帰後は力を発揮できない競馬が続いた。5戦して掲示板に載ったのは5着の1回のみ。2桁着順も3度あり、最後の勝利から約1年9カ月が経過。19年11月のオーロCでは8番人気まで評価を落としていた。

 しかし、このレースで久々に本気を出す。クイーンCとは一転し、後方から進めると直線一気。単勝21・5倍のダークホースとは思えない末脚で快勝した。

 ついに復活を遂げたテトラドラクマだったが、この直後、放牧先の牧場で事故に遭い帰らぬ馬となった。安定して力を発揮できるタイプではなかったが、勝つ時のレースぶりからも、その能力の高さは明らかだっただけに、あまりにも残念な結末だった。

 今週末、東京競馬場ではクイーンCが行われる。今年はどんなドラマが待っているのだろうか。事故やケガのない好レースを期待したい。(フリーライター)

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