【的場文男騎手引退】的場ダンスは試行錯誤の末の技術 体幹ブレず見た目以上に安定
2025年2月14日 16:00 的場文男騎手(68)が引退を発表した。73年デビューから51年5カ月。「大井の帝王」が騎手人生にピリオドを打った。
的場騎手の魅力の一つが「的場ダンス」と呼ばれる特異な騎乗フォームだった。追う際に全身を上下に激しく揺さぶり、伸び上がって沈み込む時にムチを振り下ろす。その様子はまるで馬上で踊っているかように見えた。
馬が走るのを邪魔しない、背中の負担を少しでも軽減させるという、騎乗の定石には反する。だが、的場騎手が晩年に入り「どうしたら、もっと馬を動かせるようになるのか」と試行錯誤した末に編み出したのが、この騎乗法だった。
「昔は俺も(フォームは)きれいだったんだ。でも、年を取ってからは的場ダンスがしっくり来る。ダンスになるのは勝負どころから追う時。自分なりのリズムもあるんだ」と語る。
一見派手に映るが、体幹はブレていない。全身が上下しても両膝、両くるぶしで鞍を締めて挟み込み、腰もしっかり入っている。だから、叱咤激励だけが馬にダイレクトに伝わる。的場騎手自身が馬上でバランスを崩すことはないという。
ダンスの陰には人一倍の努力がある。若い頃は走り込みを欠かさなかった。30代からはマッサージで体をケア。40代からはエアロバイク。しなやかで耐久力のある筋肉を追い求めた。調教に熱心に乗るのも筋力を落としたくない一心だ。
「多少、騎手の格好は悪くても、それで馬が動いてくれればいいんだ」。自分なりに追い求めた、大ベテランにフィットする騎乗フォーム。的場ダンスには独特の技術が凝縮されていた。