【梅崎】京都金杯、6番人気に◎新春めでたく“サクラ”咲く
2025年1月9日 10:00 木曜のテーマは競馬。前週に会心ヒットを放った記者が、的中へのプロセスを振り返る。今年最初の登場は東の長老・梅崎晴光。新春の縁起重賞「スポニチ賞京都金杯」を6番人気サクラトゥジュール◎で、3連単6万9740円の高配当をズバリ的中。南国で一足早く開花した緋寒桜(ヒカンザクラ)に呼応した“去勢効果”を見抜いた。
週末になると、ちっぽけなカウンターの上に多色刷りの競馬新聞の花が咲く銀座路地裏の酒場「寓話(ぐうわ)」。馬券親父の隠れ家みたいなその酒場で京都金杯的中の祝杯を挙げていると、女将がスマホの画像を不思議そうに見つめた。「競馬の神様からの贈り物だったのかな。この緋寒桜の花言葉通りになったわね」
沖縄気象台が今年初の桜の開花を発表したのは金杯当日(5日)の昼過ぎ。サクラ軍団の勝負服のように緋色(赤)を帯びた緋寒桜のピンクの花が首里・末吉公園の標本木から確認された。末吉公園といえば琉球競馬の中心地だったテーラマージ(平良馬場)に隣接する“神の住む森”である。「今年初の重賞もサクラ咲く…競馬の神様のお告げに違いねえ」。京都金杯の出走表を食い入るように見る常連・金城の背中を女将が押した。「緋寒桜の花言葉は“あなたにほほ笑む”よ」。金城が銀座路地裏の酒場から表通りのウインズ銀座に走ったのは言うまでもない。
サクラトゥジュールは花言葉通りにほほ笑んでくれた。道中力んで体力を消耗した前走関屋記念(13着)から一変、後方のインで折り合いをつけると、直線で内から抜け出した。前走後に心身の改善を図るため去勢。気負いが取れた調教の動きに去勢効果を見て本命にしたが、見立て通りにレースでもムキになる面が解消されていた。
去勢明けは馬体が減ってしまうため狙いづらいが、サクラトゥジュールは馬体を維持していた。緋寒桜の釣り鐘状の花みたいにふっくらした体つきが好ましかった。中京への直前輸送を経たレース当日の測定でも前走から増減なしの512キロ。状態面の不安もなかった。丈夫で長持ちするセン馬。頑丈な花木を持つ多年生の緋寒桜と特長も同じだ。
桜は撫で柄という。桜の良しあしは肥料、水やり、剪定(せんてい)など育て方、扱い方次第との意味。馬も撫で柄である。サクラトゥジュールを開花させたのは堀厩舎の育て方と、堀師が「折り合いのツボを知っている」と評価する豪州の女性騎手、R・キングの扱い方だろう。
「撫で柄が悪いのか、俺には誰もほほ笑んでくれなかったが、人のお金で飲む酒はうめえな」。ヒモ抜けで馬券を外した常連・金城と杯を重ねながら銀座路地裏の夜は更けていく。