【小林篤尚】12番人気ラヴェルの激走2着を読み切った2つの“記憶”
2024年11月14日 10:30 木曜のテーマは競馬。前週に会心ヒットを放った記者が、的中へのプロセスを振り返る。エリザベス女王杯はレース前の難解ムードそのままに、単勝1・9倍のレガレイラが5着に敗退。波乱の結末を見事に読み切ったのが前大阪本社担当の小林篤尚だ。12番人気だった◎ラヴェルが2着に激走。対抗に勝ったスタニングローズを推しており、3連単27万超の高配当を見事に的中。一足早いビッグボーナスを手に入れた。
競馬は時に記憶のゲームと言われる。ラヴェルの本命には2つの思いがあった。まずは血統。3代母に97年桜花賞を制したキョウエイマーチがいた。ちょうど競馬を見始めたころで、雨に煙る18番枠。好位からの押し切りだった。6歳でスポニチ賞京都金杯勝ちと古馬になってからも活躍。母サンブルエミューズは半妹に21年BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌを持つ。血統は底堅かった。また、3代母の父にダンシングブレーヴ。ひと昔前のエリザベス女王杯といえば、この血筋がトレンドだった。
2つ目は臨戦過程。ラヴェルは登録段階では出走馬決定順で19番目、メンバー唯一の除外対象となっていた。その後に回避馬が出て、無事にゲートへたどり着いた。18年に安田記念を制した同じ矢作厩舎のモズアスコットも、週明けは除外対象だった。そこから自重する馬が出て、繰り上がりとなった。連闘という“スパイス”も利いて9番人気V。出走が厳しい状況ながら鞍上にルメールを確保できていた。今回も出走できるか分からない中で、川田が空いていた。名手が人気薄に乗る。状況は似ていた。
鞍上の勢いも本命への追い風となった。4日のJBCクラシックをウィルソンテソーロでV。地元佐賀でのヒーローインタビューは涙を誘った。前日土曜の武蔵野Sはエンペラーワケアで重賞勝ち。思えば川田はマルシュロレーヌでダート重賞を4勝していた。血のつながりもある。レース当日は10Rまでに5鞍騎乗して2勝、3着1回。とにかくリズムがいい。川田の騎乗馬を単勝40倍台で買えるなんて。気持ちはグンと高鳴った。
馬券は冷静に買うことができた。直前の福島記念で3連複1万9070円をヒット。3着だった◎ダンディズムは思い入れのある一頭。常に重い印を入れてきた。1着5回に対して2、3着が12回。買うなら3連複かワイドと分かりやすいタイプでもある。直線ではバテずにゴール前で盛り返して3着。財布に余裕ができたことで、ブレることなくマークシートに向かえた。
対抗の勝ち馬スタニングローズは1週前、当週と坂路の動きが抜群だった。この馬が早めに抜け出し、ラヴェルが外から力強い差し。ゴール前は安心して見ることができた。予想は場合によって記憶の蓄積から、それをいかにうまく引き出せるかも大切。今回の甘い思い出もフロッピーにしまって、またいつか役立てる時が来ればと思う。(小林 篤尚)