【万里絵】大好きな馬♥

2021年8月26日 10:00

 ▼木曜日のテーマは競馬。前週に高配当をヒットした記者が「この馬券こう当てた」で的中レースを検証する。ソダシが快勝して、北海道のファンが大きな拍手を送った札幌記念。3連単1万1900円を的中した武本万里絵記者が殊勲の予想を振り返った。ソダシは大好きな馬だが、今回の条件を徹底的に分析し、改めて人馬を信頼して打った◎には気持ちがこもっていた。

 ラヴズオンリーユーとペルシアンナイトの猛追を抑え込み、吉田隼がソダシの首を結構強めに3度叩いた瞬間、グッと感動が体中を駆け巡った。肉を切らせて骨を断つ。思い描いたシナリオに近い競馬。だが、実際に目の前で見せられると、これは本当に現実か、という気持ちになる。これこそが競馬最大の魅力だと思うが、それをソダシが見せてくれた。感謝だ。

 ソダシは大好きな馬だ。アルテミスS(1着)で初めて見た時から“とりこ”になった。だがもちろん、好きだから今回◎ということではない。懸命に分析した末の結論だ。まず、52キロが魅力だった。ラヴズオンリーユーとの3キロ差は互角のイメージだが、古牡馬とは5キロ差。これは大きいと感じた。

 それから札幌コースがベストと思えたことだ。札幌2歳Sの覇者(しかもレコード)であり、適性の高さに疑いはないが、あれから約1年を経て、脚質は先行で固まった。小回りはまず有利。そしてパワーを要する洋芝。スタミナに自信を秘めるソダシにとって、道中で体力を奪う洋芝は、ライバルが苦にする分、優位に立てる。

 さらに吉田隼の連続騎乗だ。超ハイペースの桜花賞で残り300メートルで先頭に立つという勇気ある騎乗を見せた同騎手。ソダシのポテンシャルを知り尽くし、“ソダシが耐えられる範囲でどこまで厳しい競馬ができるか”を理解する、ただ一人の騎手。どこかで必ずソダシを先頭に導いてくれると確信していた。そこから粘れるのがソダシだ。それでも3角で先頭とは、さすがに予想以上だったが…。

 オークスで8着に敗れたことを悲観的に捉えた人もいた。自分はそうは思わなかった。距離が少し長かった。加えて、スタート後に他馬に挟まれ、掛かる部分もあり、スムーズさを欠いた。道中、プレッシャーなしに運べれば2000メートルはいけると感じていた。「クロフネ産駒は2000メートル以上の重賞を勝っていない」というデータもあったが、常識を破るのがソダシの真骨頂。データ派の方には申し訳ないが、全く気にしていなかった。

 もう一つ加えよう。須貝師と今浪厩務員。ゴールドシップでおなじみの黄金コンビだが、同馬は思わぬ大敗を喫した次走で、しっかり勝っていた。ダービーで5着の後、神戸新聞杯で1着。4歳時の天皇賞・春5着の後、宝塚記念で1着…。敗戦を馬に引きずらせない。ソダシもオークス8着のショックからいち早く立ち直ったはずだ。フレッシュな気持ちで札幌記念に挑めたのだと思う。寺下厚司先輩も書いていたが、馬体重は4戦連続472キロ。職人・今浪厩務員の手腕は芸術と言っていいだろう。

 今回、3連単を的中できたのは3着の8番人気ペルシアンナイトに△を回していたことが大きかった。昨年のこのレース2着馬。夏の大目標をここに置いていたことは明らかだ。また、昨年は3頭しか出ていなかったG1馬が、そのままワンツースリー決着(ノームコア、ペルシアンナイト、ラッキーライラック)。G1馬はやはり侮れないと痛感した。今年もG1馬を軽視しないよう気を配り、印を回すに至った。

 3連単は一応獲れたがちょっと安い(1万1900円)。ソダシとペルシアンナイトのワイド(1390円)にガッツリいってれば良かったかな…。まあ、そんな“タラレバ”を想像するのも競馬の面白さ。それから競走中止の○ステイフーリッシュも命に別条がなくて良かった。自分の心に残り続けるであろう札幌記念は、こうして幕を閉じた。 (武本 万里絵)

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