【鈴木智】五十路記者のノスタルジーと決意表明 記者の予想も進化&更新させます!!

2023年4月6日 10:00

 木曜日のテーマは競馬。2日の大阪杯は武豊(54)騎乗のジャックドールが、完璧な逃げを見せて2着スターズオンアースを鼻差封じた。◎△☆で3連単3万1240円を的中した鈴木智憲記者は、勝った人馬から25年前の名馬を思い出したという。本来はヒットした記者が的中レースを「こう当てた」と検証するコーナーだが、今回は五十路記者の思い出語りと決意表明。

 大阪杯、こう当てた。ジャックドール◎の理由、ダノンザキッドに☆を打てた説明をしようと思ったが――やめた。そういうのは理論派の鈴木悠や寺下が担当した時に読んでもらおう。読者諸氏は五十路の記者と同年代、あるいは先輩が多いと思う。今回はそんな方々に向けて、書きたい。

 武豊が騎乗する栗毛の逃げ馬と言えば。

 サイレンススズカだ。

 大阪杯でさっそうとハナを切るジャックドールの姿が、サイレンススズカと二重写しになった。幻影だ。その幻影を追って、本棚のスクラップを取り出す。

 「前半1000メートルを57秒台で通過できれば上々かなと思っていました」

 98年毎日王冠サイレンススズカ1着。騎乗した武豊のコメントだ。当時29歳。通過タイムは57秒7。

 今回の大阪杯。「今日の馬場状態だと、59秒ぐらいで入りたかった」と54歳の武豊。58秒9。25年前とつい先日、異口同音ならぬ同口同音のコメントに、スクラップを手にしばし、ぼうぜんとした。レースで見えたサイレンススズカの幻影は、幻ではなかったのか。

 いささか感傷的になりつつ、スクラップのページをめくる。さかのぼって98年金鯱賞。「今日のレースなら、日本のどの馬にも負けなかったと思う」とサイレンススズカを絶賛する武豊のコメント。

 今回「最後は(2着スターズオンアースの)足音が聞こえてヒヤヒヤした」。1秒8差の大勝だった98年金鯱賞と、鼻差の23年大阪杯のコメントが違うのは当然だが、はたと気づく。ジャックドールの大阪杯Vに武豊のペースメーキング能力が資するところ大だったことは疑いない。先行馬の余力を削りつつ、差し馬にも届かせない絶妙のペースが前半1000メートル58秒9だった。一方で、サイレンススズカは自分の競馬をすれば、勝てた。

 推論だが、ジャックドールに騎乗する武豊が想定したのは、自分を含む競馬ファンが考えていたサイレンススズカではない。大阪杯で最も切れるスターズオンアース、もっと言えば自身が騎乗した現役馬の中で最も強いドウデュース、現役最強イクイノックス…。そうした差し馬を封じるためにどう乗ればいいか、を考えていたのではないか。

 25年変わらぬペースを支配する力、同時にずっと更新され続けている、強敵やライバルの走りをイメージする力。その両輪が武豊を支えている気がしてならない。

 勝手ながら、武豊に激励された思いだ。スクラップを手にノスタルジーにふけっている場合ではない。記者の予想も、更新と進化を重ねていかなければ。 (鈴木 智憲)

特集

この記者のコラム

他の記者のコラム